「脱PTA」さらばコンサバファッション 素人女性誌ウォッチャーによる2021年ワーキングマザー誌短評

書いてる身としては少々意外なのですが、自分の備忘メモがわりに書いている「素人女性誌ウォッチャーによる女性誌短評」シリーズ(↓)、アクセスみてると割と読まれているので、たぶん需要があるのでしょう。ありがたいことです。

 

kurihashi64.hatenablog.com

 

さて、前回記事を書いた1年前から急速に世の中がコロナ禍に覆われ、そろそろまるっと季節が一巡しようとしています。「2020年3月2日から小学校は一斉休校だったなーー(遠い目)」と感慨に耽っていたそんな時目に飛び込んできたこの昭和40(1960)年代のPTAのツイート。

 

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私がPTAに着ていく服

 

息子は一人っ子なので三年保育の幼稚園に入れるのは、ちょっと無理なように思われ、この春から幼稚園の予備校に通わせることにしました。両親の面接試験があると言うので、あわててプレタポルテのワンピースを買いました。それこそミニかパンタロンしか持ってなかった私の貴重な通園服です。(俳優 三橋達也氏夫人安西郷子さん)(子の実名と年齢と学校名)」

 

子供が多いので、みんな区立にやりました。家から近いし、PTAにも普段着のまま行きます。中学はパパの出た麻布へとも思うのですが、難しいそうで...。(俳優/牟田禎三氏夫人 牟田 佐知子さん)(子の実名と年齢と学校名)」

 

小学校が選挙区内なので、やはり服装には気を使います。あまり派手でもいけないし、地味すぎてもと思うとブルーやグレー系が多くなってしまいます。衆議院議員 海部俊樹氏夫人 海部幸世さん)(子の実名と年齢と学校名)」

 

成蹊小学校には学期末に懇談会があります。私立ですので、普段着のままでは行かれませんが、日ごろからあまり派手なものは着ませんので好都合です。(漫画家/手塚治虫氏夫人 手塚悦子さん(子の実名と年齢と学校名)」 

 

ぬあああ。

ファッションとぶっといアイラインが効いたメイクもともかく、まず夫の肩書からはじまり、着こなしに添えられた各コメントが短い文中に「私立」「公立」「派手」「地味」と母親のキーワードてんこ盛り。どこの雑誌かは存じ上げませんが、50〜60年前とはいえ、子の実名と学校名を掲載しちゃう編集部もすごい、...誘拐されないの?

 

でもこの感じ、どこかで見たことがある。どこだろう。。。

あっ、これ「VERY」の卒入園の世界観じゃね??

 

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 https://veryweb.jp/fashion/67013/

 ※上記は1年前、2020年のveryモデル&アパレルブランド(オンワード樫山傘下の4ブランド)のタイアップ企画。

 ちなみに、今年の3月号はこの手の例年やってるスポンサーありきのセレモニー服合同企画が無かったんですよね...。あるのはセルフォード(MASHホールディングス)1社だけっぽい気がします。

   ちょっと気になって比較してみたところ、2020年3月号は約1.3cmの厚みがあるのに対して、2021年3月号は約0.9cmと前年対比で30%厚みがダウン。タキマキ卒業号である2019年12月号は約1.5cmあるので、よっぽど広告が取れていないんであろう現状が伝わってきます。

2016年段階あたりではveryの広告収入が単月で5億、部数は32万部との情報があったので、現在はコロナ禍の影響をどう受けてるのか気になるところではあります。

閑話休題

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まあ、ここまでで何が言いたいのかというと、コロナ禍入ってからというものここ1年、伝家の宝刀「コンサバファッション」がveryから失くなってません?ってことです。

ここでの「コンサバ」の定義は、「セクシーではなく」「カジュアルでもなく」「ハイブランドでもない」、見る人に不安感を抱かせず尖った印象も与えない、良きにつけ悪しきにつけ女性アナウンサーが着ているような、フォーマル寄りのファッション全般を指すと思ってください。

なんでこんなに私がコンサバにこだわっているかというと、大衆既婚女性誌の中で、唯一veryだけが、コンサバを内包しつつ大きなマーケットを取り込んできた雑誌だからです。

 

www.sankei.com

平成7年の6月。自らが副編集長を務めた「VERY」の創刊号が発売された日の興奮を、現在クリエーターとして活躍する相沢正人(57)は鮮明に記憶している。(中略)創刊号の30万部はほぼ完売し新雑誌は軌道に乗った。

 「VERY」が誕生した意義は、ステレオタイプな専業主婦像が遮って見落とされていた「30代」の市場に、ファッション誌の需要があると知らしめたことにある。多くの読者モデルを送り出した昭和50年創刊の女性誌「JJ」(光文社)の“卒業生版”として編まれた雑誌だ。(中略)後に誌上で〈公園デビュー〉や〈シロガネーゼ〉といった流行語を生みだす。誌面を彩った、おしゃれや子育てを明るく楽しむ裕福な専業主婦像は、30代以上の女性ファッション市場を開拓し、雑誌の可能性も押し広げた。

 現在のveryの編集長は、2007年から当時35歳だった今尾朝子さんとなり、「かっこいいママ」「働くママ」に方向展開しましたが、それでも2019年まで専業主婦のシンデレラともいえるタキマキさんをカバーモデルに据えていたわけなので、(実際のタキマキさんはモデル業や芸能活動をしていたとはいえ)シロガネーゼの流れを汲む裕福なご家庭の専業主婦像とそれに憧れを抱く層、という他のどの大衆誌でも据えていなかったターゲットは大切に大切に守り続けてきたのだと思います。

 

ちなみに、専業主婦とコンサバファッションは非常に好相性で、それは夫や子どもなどの家族のためという役割にフォーカスしたコスチュームだからなんですよね。

特に卒入園などの学校行事や保護者会、果てはママ同士のランチ会などで学校に足を運ぶ機会にはそれなりの装いをしておかないと、子どもひいては夫の評価を下げることになるので、それはもう細心の注意をはらって頭から爪先までコーディネートされておりもう涙ぐましいぐらいで、冒頭の昭和40年代ファッション、つまりは50〜60年前から変わってない、変える必要もない慣習だったんですよね。

 

と、こ、ろ、が!!

 今般のコロナ禍が1年続くことで、緩やかに下降していたコンサバファッションは完全に瀕死になってしまいました。

専業主婦自体が少なくなってることに加えて、数年前からオフィスでもデニムやスニーカーが許容される雰囲気が醸成されてきた(実際は能動的にブームが仕掛けられてたとは思いますが割愛)、というのも一因でしょう。コンサバファッションは、一部の限られた人が限られた文脈で身につけると言う意味で、たった1年でファンタジーの領域に追いやられてしまった、ともいえるのです。

あ、ちょっと盛ってしまいました。

 

話を元に戻しますと、前年の3月号と今年の3月号を比べてみて、最も私的に衝撃が大きかったのは下記のこの記事です。しかも割と中程のいい位置、82ページに掲載されている「ZARAユニクロ、PLSTで卒入園。30代ママの軽やかフォーマル」という企画です。

veryweb.jp

PLSTもユニクロZARAも、質の良いカジュアルで、ZARAに至ってはモード色もあり、私的に大好きです。着てます。大好きです。恨みはありません。

でも、カジュアルブランドなんですよ!

 今までだったらvery読者がセレモニー服を調達するにあたり、選択肢としてはけしてメジャーとはいえなかったブランドだったはずです。

ちなみに昨年(2020年)に掲載されているアイテムだと、ジャケット/ワンピースの予算レンジが60,000円前後、セットアップで50,000円前後。後ろの方のタイアップページでやっと、30,000円前後のワンピースが出てきます。ほかにもコートや靴やバッグやアクセサリーなど細々あるすれば、卒入園に対応できるセレモニー服の予算総額は実際50,000円スタートで天井は各ご家庭により異なる、といったところでしょうか。

この需要がまるまる、コロナ禍による外出制限の影響をうけたことにより、計2シーズンにわたって失われるというのは、アパレル各社、ひいては女性誌のマーケットにとって大打撃!

そりゃ、veryもコンサバの看板おろさざるをえないよなあ。。とちょっと寂しくなったところで、私の大好きな井川遥卒業号とタキマキ卒業号を並べて去りたいと思います。

 

秋元康不在時代」とか、書きたいキーワードは溜まっているので近々またお会いしましょう。

 

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