ついこの間、 35歳前後の属性を問わない女性にターゲットを定めていた「Domani」が、ターゲットからワーキングマザー属性を切り出して新装刊した感想を弊ブログにまとめたました。
雑誌は各社4月号が出揃った時期。
4月復職のママたちを見据えて、各誌発売号の中でファッションを提案したり「新1年生ママのおしゃれ計画」や、「春」「はじめまして」などのワードを織り込みながらもろもろ特集を組んでるわけですが、その中で個人的に目についた潮流を書き連ねていきます。
①主婦と生活社『CHANTO』の今日性
書店で見たときに、月刊誌ではなく、ムックだと思いました。
それぐらい情報の集約度が高い…!
いやー、正直なところを申し上げますと『CHANTO』って、節約とか料理とか収納とか、小ネタ中心の生活誌だと私の中で見なしていたので、ワーママ雑誌のファッション面重視の私は全くもってノーマークだったのですよ。
改めて目を通してびっくりしました。
日経WOMAN読んでたような、真面目で律儀で手帳管理の得意な女性がそのまま結婚して育児と家事に奔走してます!という、良くも悪くもチャラチャラしていない、等身大の女性がターゲットなんですね。
節約はもちろんですが、貯蓄、時短家事のほか、子どもの教育関連の記事も充実。ファッションやメイクは4桁アイテムが多くそこはファッション誌と比べるべくもないですが、この身の丈感が素晴らしい。
しかも写真とエディトリアルが野暮ったくない。いい!
そこに持ってきて、今号の表紙がりゅうちぇる&ぺこ夫妻。
インタビューがまた彼ららしくて良いのですよ。
若い2人が、家事育児を当然のようにシェアしている姿を皮切りに、
読者目線の「働くママを楽しもう」という提案
→ 家事シェアしている夫婦の経験者レポート
→ タイプ別パパ攻略法(電通パパラボが伝授)
→ 夫も作れるレシピ
→ 完成度の高い「入園前後のお悩み解決」
→ 復職ママのファッション&ビューティー
...と怒涛の流れ!お見事。
VeryやDomaniなどのファッション誌は、雑誌のテーゼや広告主の折り合いもあるので、まず問答無用にファッションというか容姿に優れたモデルを使って「憧れの姿」を想起させるところから落とし込んでいく誌面を作りこむのですが、『CHANTO』はこれが逆なんですよね。
夫婦から始めよう、というところに起点がある。
『Very』が「イケダン」の次に持ち出してきたのが「ばーば」という飛び道具だったのと対照的です。家事労働というシャドウワークを女性が担い続けるのか、それとも夫と分かち合うのか、それが問題なわけですから。
実家に頼らず共働きしてる夫婦が首都圏に特に多いことも、現実感を読者に与えていると想像できます。
これは世代的には30代前後を狙い撃ちしてるんでしょうね。
おそらく40歳前後だと、家事に男性を引っ張り込むことに対して、もう少しハードルの高さを感じている(私調べ)はずですから。
いずれにせよ、地に足のついた構成に安心と信頼を覚える共働き読者は多いと思います。
試し読みはこちらからどうぞ↓
②光文社『Very』の安定感
専業ママ・兼業主婦(リーマム)と偏りはなく、ワーキングマザーに特化してターゲットを絞っているわけではない『Very』ではありますが、さすがママ雑誌No.1の貫禄。情報量と企画のこなれ感は十分です。
新しい人間関係が出来上がる4月を、いかに戦略的に切り抜けるかという課題をファッション面で解決し続けてきた編集部の腕が冴え渡ります。
今回目新しいのは『ばーばVery』の企画(しかも別冊!)。
Twitterできよ耳さんがこの潜在マーケットを「金脈」と呼んでおられたのが印象的。以下引用しておきます。
通りすがりの者です。
— Kurihashi Nozomi (@kurihashi) 2019年3月8日
全く同じ感想です。
母と娘パターンだろどうせと思ったら、意外や息子(つまり嫁)パターンやそれぞればーば世代のキャリア観や預かる側のジレンマにも触れられていて、最後はきっちり洋服とバッグでソリューションを解決するという素晴らしい流れで惚れ惚れしました。
金脈感wwww
— Kurihashi Nozomi (@kurihashi) 2019年3月8日
言葉のセンスすてきwww
こうやって抜け目なく時代を押さえていくveryにはひたすら頭が下がります。専業主婦、共働きどっちも否定せず支えてくれながらも、旬な情報を与えてくれるこの心地よさ…!
「孫と一緒にいくプールでどんな水着を着たらいい?」ってやつが特にヒットで、弊夫に言わせると誰もみてねえよらしいのですが、そういうことじゃねえ。自分が良いと思ったものを身につけて自信を持って振る舞いたいのであって、誰かが見てるとかそういう目線じゃねえんだよと軽く煽ってしまいました笑
— Kurihashi Nozomi (@kurihashi) 2019年3月8日
真剣に考えていくと働く母の実家格差問題に行き着いてしまうっていうのは薄目で睨みつつも、この着眼点やよしですね。
— Kurihashi Nozomi (@kurihashi) 2019年3月8日
Veryの姉妹誌であるSTORYを卒業して現在集英社がメインの黒田知永子さんを表紙モデルに引っ張ってきたのも慧眼。
そのうち姉妹誌ならぬ、母娘誌として新創刊されそうですね。金脈ェ
↑「高齢出産のママですよね?」と問い詰めたくなる祖母&孫カット。
Veryはどう転んでもおしゃれな母娘に着地させてきます。その巧みさよ。今尾編集長が「ばーばVery」の狙いを語るインタビュー記事はこちら。
https://www.asahi.com/amp/articles/photo/AS20190225004511.html
③『Domani』で思い知るVeryの巧みさ
交通広告で炎上していた「Domani」です。
誌面は前号と同じくファッション偏重主義を貫いているので、ここらへんは流しておきます。
個人的には今回のコラム「23区の女」シリーズのコラムがパンチ効いてました。
前回の千代田区という謎のチョイスから、今回は王道の港区でインタビューを敢行してるのですが、まあなんというか無邪気というか固有名詞がガンガン出てくるんですよ。
産院から始まり、会員制クラブ、スーパー、学校、お稽古、レストラン、カフェ。
赤裸々で読み応えはあるのですが、これ東京ローカルの人以外が読んでおもしろがれるのかしら?というのが正直な感想。
東京カレンダーかよ!
翻って考えてみると『Very』はこのあたりのボカし方というか、一般化してスノッブさを中和しつつ読者に差し出すのが巧いんだなーと逆に感心させられてしまいました。
世田谷シックとか、二子玉マダムとか、絶妙に手が届きそうでひと匙の憧れ感があるキャッチを考えるのうまいんだよなあとしみじみ。
交通広告で炎上しちゃったDomaniの広告代理店の担当者は、絶対にオッサンだと思う。西澤千央さんの記事が非常に的を射ていると思うので置いておきます。
そんなわけで以上、ひとまず春のワーキングマザー雑誌をざっくりとおさえてみました。