林真理子考


林真理子がダイエットに成功したのは前に書きました。
「1999年、私がまだ手にしてないものは美貌だけであった」というおそろしいコピーと著者近影を新刊の帯にするという過去をもった、まことに度胸のある作家さんです。いやいやこの人世間的にはぶさいくな負け犬的なイメージがあるが、高学歴高身長高収入の旦那と結婚して、女の子を一人生んで、表参道ぞいに住み、社会的名声までお持ちの上に仕事もコンスタントに続けて評価を受けているという、絵に描いたような勝ち組だ。意外にも、その勝ち組な実像が知られていないのは、彼女自身が自分の発信するイメージを、慎重に細心の注意を払って選択しているからなのよね。
an anの裏表紙の連載で、自分のプライベートをかなりの部分さらけだしているので(誰と食事にいき、誰と会って、何kg痩せて何kg肥えたか、そして彼女は異性と割り勘で食事することを総じて「デート」という言葉でくくる・・・)私たちはずいぶんと彼女を知っているような気分になるが、そうではない。「林真理子」として、おそろしく自己演出に長けたマドンナのような人のはず。
まず第一に彼女は、勝ち組である部分を世間に露出するのを、そりゃもう慎重にコントロールしている。女児が生まれた時に「お子さんのことは書かないでください」という手紙を長年のファンからもらったことで、子供のことは出産に関する本を一冊書いただけでそれ以降はまったく触れていないことからもそれがわかる。いまや、子育てを商売にしている芸能人が多数いることからも明らかなように、子育てマーケットという巨大なジャンルに手を出そうと思ったら、簡単に進出できるはずなのに、だ。そういう意味で、彼女のパブリックリレーションのうまさは傑出している。
また、最近ではとうとう「源氏物語」にも手を出したらしい。現代語訳の頂点である与謝野晶子源氏はじめ、近年では、瀬戸内源氏(個人的には、家政婦役の市原悦子めいた語り口を押し出す瀬戸内流が大嫌いだが、世間での評価はそこそこ)、橋本治の源氏(あのピンクな語り口がたまらん、たまに読むには最高)など、いわゆる「出せば一定のヒットは見込める」ジャンルである源氏。そこにもってきて源氏物語っつーのは、いわゆる「女の業」系女流作家が「知性派」に鞍がえする際に、よく使われている手段が源氏の翻訳なんだよね。いやはや、林真理子よ、とうとうそこに手をだしたかー、という感慨でいっぱいなわけですよ。この変わり身の早さ!今までの慣れ親しんだ「アラサー」「不倫」「嫉妬」という真理子氏のお家芸を持ったつきあいの長い男を捨て、あっさりと「知性派」「文豪系」という名の好色そうなヒヒじじいに股をひらくようなもんです。
こういった「ブスであることにより、女性からの嫉妬を受けず、また話が面白いもんだからどんどんファンが増える」ってゆー生き方、紫式部以降、今までなし得た人が近年の日本にいるか?いやいない!!(反語w)そんなわけで、林源氏どんなもんに仕上がるんでしょうか。ニラオチ決定!