なんだかんだでヴィトン礼賛

ヴィトンってもう、使い古されすぎていて食指が動かない派です。まーそもそも金もないけどな。

でもアドとなると話は別。最近巨匠アニー・リーホヴィッツが撮った「旅」をテーマにした一連のアドが素晴らしい出来だ。ハイブランドのアドって、雑誌めくるときぐらいしか目にしないけど、たいがいが金髪モデルを手を変え品を変え撮影してるだけで、そこには空虚さがどうしても残る。まーそのスカした感が、日常とは一線を画すブランドイメージに貢献してる面もあるわけです。
ところが、ヴィトンのアド(コア・ヴァリュー広告)は、パッケージを売るだけでなく、ストーリーという目に見えないものを売るという点で、ブランドの原点にもどった素晴らしいコンセプトだと思う。モデルは、美を基準に選ばれた若い金髪美女ではなく、ゴルバチョフとかアンドレ・アガシ夫妻とか、歴史に名を残す偉大な仕事を成し遂げた人たち。彼らの日常の姿(とはいってもリーホヴィッツ女史が綿密に計算・指定したした日常風のポーズをとってるわけだが)のそばに、さりげなーくモノグラムのバックがたたずむという広告なのです。「こんなセレブリティにも愛されてるんだぜ」というイケイケ感じゃなくて、「彼らの歴史とともにヴィトンも歴史を歩んできました」的、奥ゆかしい感じがたまらない。ちょっと画面がスモーキーな感じなのも50年代のハリウッド映画みたいでドラマチックですてき。こーゆーなかなか売り上げに直結しないアドって、1番大事なのにも関わらず長期的には運営できなくなりがちなのに、もう3年も続けてるんだってさ。さすがヴィトンの底力。
ところでこのアドは、コミュニケーションディレクター、アントワン・アルノー氏が手がけているらしい。ん?アルノー??と思って調べたら、LVMHの支配者であるベルナール・アルノーの息子なのね!つまりは王国の王子様が作ったファンタジーのようなアドなわけだ、2代目ってどこも夢見がちなのは全世界共通ねーと納得。ふむふむ。ゆくゆくは彼がLVMH王国をつぐのかしら?

個人的に一番好きなのが、コッポラ親子の映画監督共演バージョン。ソフィアの表情がいーのよ。

(ヴィトンのコピーライト規制なのか、大きいサイズの画像が見つけらんないので詳細は下記で)
http://openers.jp/fashion/news/photo_LouisVuittonCoreValuesAD.html?num=05

あと、彼らの近年の功績は、マーク・ジェイコブスをデザイナーに抜擢したことね!
当時グランジばっか作ってた彼に、プレタポルテのラインをまかせたのはすごい英断。あたしにデザイナー指名の決裁権限があったら、すでにキャリアを確立していたゴルチェあたりで茶を濁すよ(まーそれはエルメスがしっかりやってるけど)。ストリートファッションの美しさとか霊感みたいなものとハイブランドの融合に、目をつけるのが早かったんだろうなと思う。だから、あたしは彼の作ったモノグラムのコラボラインでも1番最初の「グラフィティ」シリーズが一番好き!スティーブン・スプラウスのグラフィティというNYストリートカルチャーの象徴を、モノグラムというハイファッションにのせちゃう心意気!粋だわー、ミックスの極致だわー。

唯一身が震えるほどに所有欲をそそられるシリーズ。今のリバイバルバージョンはデザインは全く同じで、グラフィティ部分のみ蛍光色で出してるけど、当時はホワイトだったのよね、それもクラッシイだったわ。マークも今みたいにクリーンでマッチョじゃなかったし、メガネの繊細そうな青年だったもんな。
ま、日本人として村上隆のシリーズも大好きです。